2012年4月23日月曜日

M-memo  1.0 【ワン・ポイント・オー】あらすじ




1.0 【ワン・ポイント・オー】

サイモンは、モニター越しの男から「コード」を催促されている。彼の部屋に段ボール箱が届くが、中身は空。ドアには立ち退き勧告が貼られている。エレベーターに一緒に乗った男は、サイモンが降りた後、突然手に湿疹が出て苦しみ出す。

スーパーに入るサイモン。手に取った新聞には、「体内投薬ナノマイト」「脳のない死体発見」といった記事が並ぶ。新聞とミルクを買って21ドル52セント。見えそうで、はっきりとは見えない誰かの気配を感じてレジの男に聞く。「他に客は?」「いるよ、茶色の上着に帽子の男」

アパートに戻ると、建物正面には見慣れないトラック。エレベーターから異音がしたため階段を上ろうとすると、誰かの死体が運ばれて行くのを見る。家に戻るとまた段ボール� ��がある。誰が置いたのか。空の箱を手に取り当惑していると、相手の分からない電話。「箱に触るな」
混乱しつつも「空き巣に入られた」と緊急センターに電話する。

アパートの廊下で、隣室の犬パピーに吠えられる。部屋には犬の飼い主である隣人の男の他、美しい女が居るのが見える。デリックが心配して声をかけてきた。彼は首だけのロボットを作っている老人だ。デリックは「スマートソファ」も見せてくれた。リモコンで柄が変わり、自分で汚れを落とす夢のソファ。デリックに「箱が届かなかったか」と問い掛ける。大家の嫌がらせかもしれない。

部屋でパソコンを起動しようとすると「箱は届いたか?」とメッセージが出る。再起動すると、ビデオフォンを通してまたコードを催促された。「大口の客だから我々の首が飛んでしまうんだ、早く送れ」
技術上の問題が発生したから24時間の猶予をくれ、とメッセージを送る。モニタに向かい、ミルクを飲み乍ら作業に没頭していると大家が訪ねて来た。「家賃を払わないなら出て行ってもらう、俺の役に立つなら別だが」とパソコンの修理を強要される。今夜は急ぎの仕事があると断ろうとしたが、押し切られて大家の部屋へ。今晩11時半頃からフリーズして終了しないと言う。大家のパソコンを見乍ら「誰かが部屋に入った」と訴えるが、あまり真剣に取り合ってはもらえない。「20分程時間をくれ」と大家を部屋から出し、自分の部屋でも監視カメラの映像が見られるようにしてしまう。
終わったと声をかけても大家は戻って来ない。自分の部屋、617号室の鍵も念のため持ち去る事にする。誰も居ないが「飲み物はあるか?」と聞きつつ冷蔵庫を開けると「ファーム・カット・ミート」ばかりがギッシリ入っている。

自分の部屋に戻るとまた箱がある。中身は空。監視カメラの画像をチェックしてみるが、誰が箱を置いたのかは結局分からない。

スーパーに入ると、今日の新聞には「クローン牛に新種のアレルギー」という記事。鍵とミルク、新聞を買い32ドル52セント。この前の帽子の男もまた居るようだ。

アパートに戻るとハワードがエレベーターを修理している。ハワードはアパートの使用人だが、数日姿を見なかった。ハワードに「部屋に箱を届けたか」と問い掛ける。
「それが奴らの策略だ。俺は奴らに勝ったがね。奴らの武器を教えてやる。ターゲットの選定・大量生産・安い労働力・品質の均一・アクセスの進歩…永遠に続く成長、永遠に生きましょう、ハレルヤ、俺はろくでなし、ハレルヤ、どうかお恵みを」
歌うように答えるハワードに「変だぞ」と苦笑しつつ、気になる人物を見たら教えてくれと頼んで別れる。

階段を上り切ると、フロアでトリッシュに出会う。彼女の部屋の鍵が見当たらず、電話を貸す事になる。彼女はサイモンの部屋から何処かに電話をかけるが相手は留守電。鍵の事を大家に頼もうと提案して電話をすると、廊下での2人の様子を監視カメラで眺めていた大家は「友達が出来たな」と言う。
大家が来るまでの間、殆ど初めて言葉を交わす2人。彼女は夜勤明けで疲れているようだ。もう1本電話をかけさせて欲しいと頼むトリッシュ。相手はまた留守電のようだが「明日病院に箱を届けて。夜には取りに行けると思うわ」と伝言を残している。『箱』と言う言葉に反応し「箱を送ったのは君なのか?何故この部屋に来た?データは暗号だぞ、盗んでも解読出来ない」と詰め寄る。トリッシュは「部屋にはあなたが入れたのよ、私は眠りたいだけ」と言い残して立ち去る。

彼女が去り、再びミルクを飲み仕事に没頭する。セットしたアラームが鳴り、メールを受信した。「24時間経ったぞ、コードを送れ」
パソコンにはメールとは別のメッセージが浮かぶ。「よくクラッシュしますか?」
システム再起動。
「ウィルス感染は怖いですか?」「今すぐ全てを失う恐れあり」「保護したいですか?」「詳しく知りたいですか?」
矢継ぎ早に表示されるメッセージに、堪らずコンセントを抜く。空調を上げ、振り向くとまた箱がある。新しい鍵も付けたと言うのに。


車ではありません世界で一番ホットなスポーツ

『特急便のナイル』に電話をして「最強の防犯システムを大至急届けてくれ」と依頼する。「最新ウィルス対策ソフトと牛乳3本も」

「1時間以内に」と答えたナイルは、程なく笑顔で荷物を届けに来た。赤外線で侵入者を感知する警報器と、最新ウィルス対策ソフトを携えて。勿論ミルクもある。
何故警報器を?と問うナイルに、「鍵は自分しか持っていないのに、箱が4つ届いた」と答える。ドアに警報器を取付けながら、ナイルが「窓や通気孔は平気か?」と聞いてくる。ナイルの買って来た、いつもとは違うミルクに眉をしかめながら通気孔を覗き込む。「顔色が悪い」とサイモンを気遣うナイル。

やはり通気孔が気になり、隣の部屋を訪ねて「通気孔から入って、箱を置いたのはあんただろう」と犬の飼い主に言うが、笑い飛ばされるだけだった。

仕方なく自分の部屋に戻ろうとすると、デレックの部屋からステレオの大きな音が漏れている。「ステレオの音を絞ってくれ」と頼むと「金曜の夜だぞ、入って酒でも呑んで行け」と誘われる。
デレックの部屋に入るとくしゃみが出る。ミルクが飲みたいと言うと「風邪にはコニャックが一番の薬だ」と返されるが、サイモンはあくまでミルクを飲みたがる。
ソファには大きな染みがあった。自分で汚れを落とす機能は壊れているのだと言う。頭だけのロボット、アダムは改良されているようだが、今は眠っている。「子供が欲しかったが種に問題があった」と言うデリック。
「アダムの産声は?」とサイモンが聞くと、デリックは「こんな感じかな…『アー』」と、低く、抑揚がない「産声」を出してみせる。

アダムに、サイモンの話し方を教えたいと言うデレック。アダムの為に発声し、録音する。一通り録り終わると、突然アダムが話し出す。
「サイモンありがとう、箱を見たいかい?」
「父さん、変化が起きている…僕怖いよ」
ネットにアクセスし始めるアダム。サイモンからデータを取った音声で「ボクから何かを盗もうとしている」「変化が起きてる、変化とはゼロのことだ」と言うアダム。モニタに流れる画像の中、犬の飼い主の怪し気な姿が映る。デレックは「これは奴のゲームだ、ポルノだよ」と言う。「君も利用されてないか?ポルノに登場してるかもしれないぞ」

監視カメラをチェックして、犬の飼い主の動向を探る。出掛ける彼を尾行してみると、あるクラブに入って行く。続いて入ると、内部はトンネル状で奇妙な雰囲気だ。何かのゲームに興じている者も居る。やがて犬の飼い主の席へ看護婦のトリッシュがやって来て、親し気にキスを交わした。トリッシュは何かのチップも手渡したようだ。見詰めていると、彼女に気付かれたようだ� ��た。

店を出て犬の飼い主を待ち、再び尾行を始める。しかし尾行に気付かれており、曲がり角で待ち構えられ、胸倉を掴まれてナイフを突き付けられる。「俺のクラブに来たか」と問い詰められるが、「何故箱を送りつける?」と問い返す。男は「箱だと?何の箱か分かっているのか」と笑う。「それで俺をつけたのか。ゲームの話をしたいのか?お前も参加してる。追うか追われるかだ。変化が起きてるんだ。…教えてやっても良い。お前が決めろ」   

連れ立ってアパートに戻り、廊下の監視カメラを叩き壊す犬の飼い主の後について、彼の部屋に入る。犬のパピーは空腹のようだ。薄い壁の向こうから、サイモンの部屋の電話が鳴っているのが聞こえる。咳き込むサイモン。犬の飼い主が好んで飲むのはコーラ500。彼の パソコンも最新のウィルスにやられたと言う。ディスクをセットすると「システムエラー」の表示が出るが、犬の飼い主は「バグはゲームの一部で、ゲームと共に成長する」と言う。クラブにもあった機械を覗き込むと、実際には存在しないものがすぐそこにあるかのように見える。ベッドに横たわるアリスと言う女性、看護婦のトリッシュ。「このチップは癌病棟に勤めるトリッシュから受け取った」と言う犬の飼い主。「彼女はセックスして、死に囲まれた生活の中で生きている実感を得るんだ」
ベッドの上で乱れるアリス。そのゲームの中へ、サイモン自身の姿が現れた。ゲームのフラッシュバックから何とか現実へと戻って立ち上がると、足下には血だらけの犬の飼い主が倒れていた。
「俺も箱を受け取った。…コーラ500、500だ」
嘔吐し、冷蔵庫を開けると、中にはコーラ500だけが大量に入っている。
死体を横目にもう一度ゲームを覗くとトリッシュが「汗と血の匂いが好き。あなたは私の恋人、私のもの」と呟く。そして彼女の傍らで、ゲームの中の自分がこちらを見詰め返している。ゲームを操作し、基盤を取り外す。ドアは犬に阻まれて通れない。通気孔を通り、どうにか自分の部屋に辿り着く。


1997ダッジ·ネオンのドアパネルを削除する方法?

アパートのランドリーで血に汚れた服を洗っていると、トリッシュがやって来る。サイモンの様子がおかしいと察したトリッシュが抱きしめてくる。為されるがまま、腕の中で嗚咽する。
落ち着くとトリッシュに「病気かもしれないから近付かない方が良い」と言う。咳やくしゃみが続いているのだ。その様子を監視カメラで見守る大家。「見られてる」「だから何?彼も寂しいのよ」

また死体が運び出される。今度は犬の飼い主だ。車には public emergency response /from the people for the people と書かれている。

スーパーで、いつもの「ネイチャーフレッシュミルク」を5本レジに出す。薄らと汗をかき、疲弊している様子のサイモンにレジの店員が「これを全部?鼻水が出るぞ。膵臓が肥大する」と言うが、聞き入れない。会計は82ドル57セント。値段が上がっているようだ。

アパートに戻ると、エントランスで刑事らしき男が2人待っている。暫く話をした後に部屋に戻ると、5つ目の箱。立ち尽くしていると電話が鳴る。相手は頭だけのロボット、アダムだった。「黙って話を聞いてくれ。君の脳とすっと話そうとしてた。買うのを止めるんだ。もう切るよ、7時に電話する」

電話が切れると、激しいノックの音がする。特急便のナイルだ。「隣の男も客だった」と苛ついた様子のナイルが捲し立てる。「伝染病か?� �んたも病気なのか?…彼のゲーム仲間は反企業活動に関わってた。例の箱と関係があるのかも」

「まだ箱はあるか」と問われるが、置いてあった筈の場所から消えている。所在無さげなサイモンを見て、ナイルは血液検査をするよう勧める。採血キットがあるからここでも調べられると言うナイル。僅かに血を採ると、研究所に持って行くと言う。その最中もミルクを飲むサイモンに、ナイルは「ミルクのアレルギーだろ、飲むのを止めて様子を見ろよ」と言う。

その言葉に促されて、全てのミルクをシンクに流す。空き箱を放り込んだダストシューターから、犬の鳴き声や奇妙な音・人の話し声が聞こえる。「ネイチャーフレッシュミルク」と言う言葉も聞こえてきた。階段を下り、ダストシューターの行き着く先である地下� ��で歩いて行くと、ハワードが居る。音の事を聞くと「パイプを修理していた音が響いたんだろう」と言い、地下の奥の一角である彼の「家」に招いてくれる。
「食べ物を誤解している人間が大勢居る。体の働きも料理のことも分かっちゃいない」
極上のブドウで作ったと言うワインと、サンドイッチを振る舞ってくれるハワード。
「信じていいか」と問うとハワードは「多分な」と答える。「例の『プレゼント』の事か?」と聞くハワード。サイモンは言う。「何もかも感じてしまう。建物の声が聞こえるんだ、振動のような唸り声や物音。このアパートと箱が怖い」
「良心を失わなければ大丈夫」と宥めてくれるハワード。「誕生日おめでとう、俺の昔の発明品だ」と木箱を差し出す。中には黒い玩具の虫が8匹蠢いている。

部屋に戻ると、またしてもコードの催促だ。相手は「最悪の事態だ、代わりの者を雇った」と喚いている。手にした新聞には「警察はアパート殺しの容疑者を追跡中」とある。モニタの向こうでは、未だ男が捲し立てている。「連絡しないと、この業界から抹殺するぞ」

激しいノックの音がする。気付けばベッドの中。ドアの外では、いつか話をした刑事2人がドアを開けろと急かしている。追い詰められて呆然としていると、刑事達は諦めて帰って行った。気分が悪くなり蹲る。どうにか立ち上がり、ふらつきながら冷蔵庫を開けると、中は空。先日牛乳は全て流して� ��まった。急いでスーパーに駆け込み、ミルクを買い込む。見るからに具合の悪そうなサイモンに、レジの店員が心配して声をかける。

部屋に戻ると、何本もミルクを飲み干す。
そのままテーブルで眠ってしまったのか、気付けばまたノックの音。今度は穏やかな調子だ。ドアの向こうに居るのはトリッシュ。ドアを開けると「電話をくれた?」と聞かれるが、覚えはない。ひとまず招き入れると「眠れないの」と言うトリッシュ。彼女はこのアパート以外の何処かに引越すと言う。
「病気が怖くて皆出て行ってるわ。何処へ行っても誰も気にしない。異常だわ。それとも私が異常なのかも。病院も売却されるの」
「箱は届いたかい?いつもとは違う物を買って使った?」
「箱の事を気にし過ぎだわ。殺人は異常な事だしこの会話も変よ。普通はこんな風に考えないわ」
「ゲームに出てたね」
「現実から逃げる方法がそれしかないからよ」
「彼が死んだ時、僕はゲームをしてただから実感がなかった。でも恐ろしくて通風孔から逃げ出したら、彼の部屋に誰かが来た」
「あなた病気よ。検査はしたの?」
「ナイルがした」
「彼は医者なの?」
「彼は友達だ」
「このアパートには友達も家族も居ない。いつか子供が欲しいけど、こんな堕落したところで育てなくない。抜け殻になる前に出て行くわ」
帰って行くトリッシュ。


アダムが再び電話をかけてきた。「体調はどう?人間の論理を随分学んだよ。ゼロは機能を停止させる悪だ。ゼロにされてしまうぞ、買うのを止めろ。買う事は答えじゃない、彼らを信用するな」

アダムからの電話が切れると、立て続けに大家から電話が入る。「何か変なんだ…ファームカットミート…今の聞いたか?聞いたか!?助けてくれ!…ファームカット…」
大家は、言うつもりがないのに「ファームカットミート」と口走ってしまうらしい。
「誰か居る…自分を抑えられない…誰か、俺を支配しようとしている奴がいる」
突然電話が切れた。

大家の部屋へ向かう途中、廊下の奥に走り去る男の姿が見える。部屋では大家が既にこと切れていた。立ち去ろうとすると、刑事の姿が見えた。それを避けてハワードの「家」に行くが彼は不在。「話がしたい」とメモを残す。

部屋に戻ってくると、警報器をかけ忘れていた事に気付く。電話が鳴っている。それは「確実に伝えるために」と雇い主が初めてかけてきた電話で、用件は解雇通達だった。雇い主が問い掛けてくる。「コードはどこだ?」
「感染した」と答え、逆に「コードを欲しがっているのは誰か、何のコードか」と問うが、相手も「解読を頼まれたが、詳しい事は分からない」と言う。

電話を切るとけたたましく警報器が鳴る。アラームを止めると、今度はドアからノックの音。ドアの向こうにはまた2人の刑事が居る。「話がしたい、大事な話なんだ。君の健康と安全に関する事だ」
警報は間違いだと取り繕おうとするが「問題があるから来たんだ」と刑事は言う。「この建物に住むのは危険です、それを警告して回ってます。強制は出来ませんが、解決するまで退去を勧めます」
咳き込むと、具合が悪いのなら病院に行くようにと刑事に促される。室内に戻るとまた電話が鳴る。ナイルからだ。血液検査の結果が出たからそちらに行くと言うナイルを遮り「病院に行くからもう必要ない」と断る。ナイルは「病院には行くな」と止める。

アパートを出て、病院に行こうとするサイモンの前にナイルが到着。「血液に異常があったが、病院にだけは行くな」と強い調子で言う。「病院にはトリッシュが居るから」と言うと、「アパートの住人は信用するな、俺だけを信用しろ」と言うナイル。
「何の仕事をした?ウィルス対策だな?」
「コードが感染した」
「感染したのはあんただ、住民にうつしたのも。俺達は実験台で、実験は失敗したんだ。放っておけば2人とも死ぬ。早くバイクに乗れ」
「あの箱は何だ?何故送られてきた」
「あの箱で運んでいたんだ」
「空だったぞ」
「空じゃない、目には見えないんだ。危険な物が俺達の脳に入った」
「それは何だ?」
「ナノマイト、ワンポイント・オー版。企業の超極小広告マシン。あんたはそれに洗脳されて、牛乳ばかり買ってた。さあバイクに乗れ」
「嘘だ、君は奴らの手先だな、僕を脅して操る気だ」
「違う、あんたの解読してたコードで助かる」
「コードは手に入らないぞ、僕の頭の中にある。二度と近付くな」
バイクには乗らず、ナイルに背を向ける。

アパートに戻ると、デレックの部屋からアダムを叱責するような声が漏れている。ノックをして「アダムに話がある」と言うと、「アー」と叫びをあげていたアダムがぴたりと静かになる。サイモンを認識すると「僕も君に話がある、君を助けてやれる」と言うアダム。「父さんはナノマイトを作ってない」

デリックの部屋に入り「箱は届いた?何を買った?」と詰め寄る。トボケるデリックの傍らで「父さんは感染してる、父さんは嘘つき、ナノマイトは欠陥品」と喋るアダム。アダムの電源を抜くデリックに「箱を送ったんだろう」と問い詰めると、「犬の飼い主が殺された晩、君が彼の部屋に入るのを見た」とデリックが言う。「僕が犯人なら、あんたの命も危ないぞ」と言い捨 てて、デリックの部屋を出る。

デリックの部屋を出たところで昏倒すると、そこへトリッシュがやってくる。介抱されながら、買物袋をさげたトリッシュに、何を買ったのかと聞く。
「ジュースとかよ」
「とかって何?」
「実はジュースだけよ」
「どんなジュース?」
「カルシウムとビタミンEが入ったオレンジジュース」
「必ずそれを買うだろ。何故か分かるか?感じないか?僕は虫(バグ)だらけだ、間違いだらけだ」
「人生は間違いだらけよ」

初めてトリッシュの部屋に招き入れられる。
「愛してないわ」「僕も愛してない」
抱き合う2人。

ベッドの上で飛び起きると、トリッシュの姿はない。服を着てトリッシュの部屋を出ると、廊下でトリッシュとナイルがキスをしている。激しく視界がブレて、廊下に無数の箱が転がるビジョン。改めて見るとそこには、トリッシュ達ではなく刑事達の姿が見える。後退りながら自室に戻ると、冷蔵庫に1本残ったミルクを呷る。


「サイモン」
背後から男の声がする。振り向くと死んだ筈の大家が立っている。激しくノックされたドアを見て、また元の方を振り向くと、もう大家の姿はない。幻を見たのかと思いながらドアの覗き穴を見ると、またしてもそこには大家が居る。「帰れ」と叫ぶと、ドアの向こうから「ナイルだ、開けてくれ」と声がした。「手遅れになるぞ」
警報器を解除し、ナイルを部屋の中に入れる。「俺を信じるか?」と聞くナイル。
「居る筈のない人間が見える」
「バグさ、試用版だからな。でも改良版を見付けた。『ワン・ポイント・ワン・ポイント・ファイブ版』だ。触るだけで良い」
「試したか」
「ああ、俺を見ろ。治ったよ。他に選択肢はないんだ」
促され、一瞬触れる。「本当に気の毒だと思う」と言い、ナイルは立ち去る。

スーパーに行くと「ファーム社製品をお気軽にお試しください、毎日がより快適になる筈です」とアナウンスが流れている。今まで買った事のない缶・箱・袋(中にはファームカットミートもある)を山程買い込み、気分が良くなる。

アパートの廊下でトリッシュの姿を見て名前を呼ぶが、彼女はサイモンの方を見ずに部屋に消えた。

彼女の部屋の前に行き、「トリッシュ、僕だよ」とノックする。続けてサイモンは、自分の意思とは無関係に言葉を発する。
「ネイチャーフレッシュミルク」
愕然としつつ、更にトリッシュのドアをノックすると、その手の甲に赤い湿疹が広がって行く。

困惑し怯えるサイモンの耳に、ダストシューターを通してハワードの歌声が届く。しかし名前を呼んでも、サイモンの声はハワードには届かない。パピーが吠えたてながら近付いて来た。廊下に戻ると、そこには無数の箱。躓きながら通気孔に逃げ込むと、中では奇妙な音が響いている。

どうにか自室の通気孔へと辿り着くと、ナイルに電話をする。「騙したな、バグなんてないんだろ。…フレッシュネイチャーミルク…聞こえたか?勝手に口が動いてしまう。箱を届けたのは君だろ」

トリッシュの留守電にメッセージを残す。「君と一緒に行きたいよ、君の言う通りだった。…ネイチャーフレッシュミルク…助けてくれ� ��普通に戻りたい。でももう手遅れだ…」

ふらついて箱を落とすと、ハワードのくれた虫の玩具がガサガサと音を立てる。そこへ「虫の音がした」とハワードが顔を出す。「何か飲むかい?…ネイチャーフレッシュミルク…聞いただろ?ナノマイトが言わせたんだ」
「ああ、退治しないと大変な事になる」「ハワード、怖いよ」

「善人と悪人がここに向かってる。悪人は君を救えても救わないし、善人には君は救えない。悪人とは、ファーム社の連中の事だ。君の頭脳と金が欲しくて、ナノマイトを仕込んだ。君を助けたい」

手を取り、口を開けるように言うハワード。注射器を取り出し、サイモンの口に何かを注入する。

「拒絶反応だよ。昔はこんなお粗末なものはなかった。『ハードドライブ』を取り除かないと、死ぬぞ。大家もゲームの男も俺がそうやって救った。ゴミ収集人は手遅れだった。だが俺も全てを分かっている訳じゃない。しばらく辛いだろう。だが眠りにつき、目覚めれば全てが変わってる。全て良くなってる。目覚めた時こそ反撃の時だ。これは始まりだ」

� ��屋の中のアダム。ベッドのトリッシュ、その腹部。ファーム社の2人が繰り返しドアに体当たりをする。雪が舞う中、犬のパピーを連れたハワード。

室内では、頭部を切られたサイモンが横たわる。薄らと笑顔を浮かべているようにも見える。

「アー」と叫び続けるアダム。外ではまだ雪が降っている。*



初見時に色々と解らなかったので、再度見たこの機会に細かく書き出してみたのですが。結局ハワードの言動を中心に、やはりあれこれと不可解でした自分には。

全体的に黄味掛かった映像で、スーパーも犬の飼い主の店も一続きのエリアような印象。病院に行く事をナイルに止められる場面のみ明瞭な青空の下だったと思うんだけど、あれは分岐点に成り得たのだろうか。



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